【最新版】2025年4月施行 建築基準法改正:確認申請・省エネ・構造設計の注意点


第1章:改正の背景と目的

2025年4月に施行された建築基準法の改正は、単なる制度変更ではなく、建築業界にとって構造設計、性能評価、申請手続きにわたる大きな転換点となりました。
その背景には、以下の3つの社会的要請があります。

  1. 脱炭素・省エネルギー社会への対応
     すべての新築建物に対して省エネ性能の確保を義務付けることで、温室効果ガス排出の抑制を目指しています。
  2. 安全性と設計合理化の両立
     実際の荷重や部材性能を基にした構造設計を可能にし、従来の画一的なルールから柔軟な設計への転換を図っています。
  3. 申請負荷・手続き合理化への配慮
     一部審査の省略や提出図書の簡略化など、実務者の負担軽減にも配慮されています。

第2章:確認申請・4号特例制度の見直し

改正によって長年続いてきた「4号特例制度」が廃止され、新たに「新3号建築物」「新2号建築物」という区分に再編されました。

  • 新3号建築物:構造審査の省略が認められる小規模建築物
  • 新2号建築物:構造審査が必須の中規模以上の建築物

これにより、従来は省略されていた構造図書の提出が必要になるケースが増加しています。
設計者の責任がより明確化され、確認審査機関とのやり取りも慎重な対応が求められるようになりました。


第3章:省エネ基準の適合義務化

これまで任意だった小規模住宅への省エネ基準適合が義務化され、すべての新築建築物が対象となりました。評価の主な指標は以下の通りです。

  • 外皮性能(UA値・ηA値)
  • 一次エネルギー消費量

確認申請時には、省エネ計算書・仕様書・設計図書との整合資料の提出が必要になり、設計初期からの対応が不可欠です。
現場では、計算ツールの導入とスタッフの習熟、設備仕様との連携が大きな課題となっています。


第4章:構造規制・木造設計ルールの見直し

構造に関しても大きな見直しが行われ、合理的な設計が可能になりました。

  • 壁量計算:屋根や積雪荷重など実際の荷重に基づく算定が可能に
  • 柱径の最小寸法:部材にかかる荷重から必要断面を導出
  • 基礎構造:地耐力・上部荷重を考慮し、鉄筋量を合理化

設計の自由度が広がる一方で、根拠に基づいた説明と提出資料の整備が不可欠になっています。
設計者には、構造知識と文書化能力の両方が求められます。


第5章:適用時期・経過措置・実務対応のポイント

  • 施行日:2025年4月1日
  • 対象:施行日以降に確認申請を行うすべての建築物

省エネや構造の合理化ルールには経過措置も一部存在しますが、原則として新基準での対応が求められます。
現在(2025年10月時点)、現場では対応のバラつきや審査機関とのやり取りに課題も出てきています。

実務対応として必要な主な項目は以下の通りです:

  • 計算ソフトの習得と運用ルールの整備
  • 申請書類テンプレートの更新
  • 設計者・現場監督への教育
  • 顧客向け説明資料の刷新

まとめ:建築基準法改正は今後の設計の“基準”を変える

2025年4月に施行された建築基準法改正は、設計者・工務店・確認審査機関すべてに新たな責任と可能性をもたらしました。

  • 省エネ性能の義務化
  • 構造安全性の合理的な判断
  • 確認申請制度の見直し

これらの変更は、単なる「制度の厳格化」ではなく、より高品質で合理的な建築を実現するための基盤整備といえます。

今後の設計実務においては、制度をただ守るだけでなく、「新ルールをどう活かすか」という視点が問われます。
改正内容を正しく理解し、設計・申請・顧客対応に活かすことで、建築の質と信頼性をさらに高めていきましょう。